本来、釣りの歳時記において、タナゴは冬の釣りものとされてきたが、現代においてはタナゴ釣りを一年中楽しむ人も多くなった。タナゴの婚姻色が楽しめる春のタナゴ釣りも盛んだが、関東に関西のタナゴ『カネヒラ』が入ってからは初夏から秋にかけてのタナゴ釣りも盛んになった。『カネヒラ』は秋産卵型のため、ゴールデンウィークあたりから稚魚が浮上しはじめ、初夏には数釣り、晩夏から秋にかけては婚姻色を楽しめる。
ちまたではカネヒラが釣れていると噂を聞いていたが、マタナゴとチャリエビにうつつを抜かしていた俺はカネヒラ祭りに参加しそびれていた。そこで、この休みは遅ればせながら、不破氏とカネヒラ釣りを楽しもうということになった。
朝起きた。時計を見ると、6時を回ったところだった。何気なくスマホを見ると、ラインが入っている。
「一旦、家に帰ります。」
「・・・?・・・!?」
俺ははじめ、事態をまったく理解できないでいた。まずはアイスコーヒーでも飲むかとセブンイレブンに自転車でのんきに出かけた。しかし、アイスコーヒーを飲んでいると、この状況がだんだん分かってきた。寝坊だ!4時に不破氏が迎えにきてくれているはずだった。前の日はふるまい酒だったため、調子に乗って飲み過ぎた。俺は走って家に戻り、不破氏にTELをし、平謝りに謝った。しかし、この時点で俺の頭はアルコール漬けですっかりバカになったままだった。自転車をセブンイレブンに忘れてきた。(笑)
まずは急いで、不破氏のところに車で向かった。不破氏は怒らず、俺を待っていてくれた。しかし、これから出発しても俺たちの目的地に行くには少々、時間が掛かりすぎる。そこで、わりとご近所の釣り場に行く先を変更した。
一時間ちょいで釣場に着いた。緩やかな流れの用水路だ。さっそく釣り始める俺たちであったが、アタリはまったくない。しばらく流れの中で浮子を流してみたが、いつまで経っても、状況は変わらない。俺は周辺を歩いてみることにした。
少し上流は浅くなっていて、底が見えた。目を凝らし見ていると、タナゴがちょろちょろと泳いでいるのが見える。俺は再び緩やかな流れに浮子を流した。タナゴはタナゴがいる場所で釣りをしさえすれば、釣れる。今度は浮子が簡単に沈んだ。プルプルとした小さな魚信の正体は小さなヤリタナゴだった。
俺はお得意のサイトフィッシングで数匹のチビヤリを釣り上げた。まだ流れにはタナゴが見えている。しかも中には少し大きな魚影も見える。俺はもちろん、その大き目の魚影を狙った。そして、何度か、タナゴたちの近くに仕掛けを流していると、大き目のタナゴがエサに近づき、エサを銜えるのが見えた。手に伝わる魚信はチビヤリのそれではなかった。やはり、手元に運ばれてきた魚はカネヒラだった。
「あれ?カネヒラじゃん。」
不破氏がこちらに近づいてきて、驚いたように言った。そう、この近場の釣り場でもちゃんとカネヒラは釣れるのだ。
『カネヒラを釣るなら、石を釣れ。』
俺が作ったタナゴ格言だ。これくらいの大きさになったカネヒラはコケを食うためか、石の周りにいることが多い。文字通り、石を釣った俺は次々に中学生カネヒラを釣り上げた。不破氏も釣り方が分かったようで、カネヒラを上げている。
「なんだ、遠くまで行かなくても、ここで十分にカネヒラが釣れますね。」
俺は寝坊の後ろめたさを隠すように、ちょっと楽しそうに言ってみた。(笑)
11時前になり、アタリが止まった。日が完全に上り、かなり暑くなったので、俺たちもこれで釣り上がることにした。11時にはラーメンデーターバンクで常に全国5位以内に入っている、あの名店が開く時間だ。カネヒラにそこそこ満足できたし、俺たちは迷わずラーメン屋さんに行くことにした。
俺は生まれてこのかた、どんなに飲んでも遅刻はしたことがほとんどなかった。今回は痛恨の極みであった。これでしばらくは不破氏に頭が上がらなくなった。
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