「師匠、いよいよ春になりましたね。僕も久しぶりにタナゴ釣りに行こうと思います。4月の○日あたり一緒に行きませんか?」
俺は基本的に自由を愛する男だ。プライベートの俺は俺を何者にも縛らせない。なので、もちろん、自分の行動を制約する弟子という存在など、一度も取ったことはない。しかし、俺のことを勝手に『師匠』と呼ぶ男がいる。探偵ナイトスクープ西田局長の息子、西田浩行だ。
西田浩行は打算的な男だ。このLINEの言葉は俺にタナゴが釣れる場所に釣れて行けということなのだ。そして、彼には俺に隠れ、『師匠』と呼ぶもう一人の男の存在がある。爆釣新撰組局長だ。局長と俺は十年来のお友達だ。『師匠』の件は当然、俺も耳にも入っている。そして、今回はドジョウおたくのカッシーを誘い、西田、局長、カッシー、俺と四人での釣行となった。
四人での釣行を決めてから、かなりの寒の戻りがきた。俺は西田に
「寒いから釣れないかもよ?」
と何回もLINEを送った。しかし、西田からの答えはいつも
「僕には○日しか時間がないんです。」
という返信の一点張りだった。新婚の西田はなんとか家庭と釣りのバランスを取ろうとしているらしかった。しかし、俺に言わせれば、こんなのは最初が肝心なのだ。(俺は新婚旅行もタナゴ釣り11泊の旅だったからね。:笑)こんな時は奥さんが何を言おうがタナゴ釣りに出なければならない。これではこの先もタナゴ釣りに出るのに、いちいち奥さんの顔色を窺うことになってしまう。今となっては家庭をまったく顧みない俺にとっては理解しがたいことだが、彼の必死の懇願にしょうがないので、付き合うことにした。
当日は朝から雨だった。ちょうどいい。これで道路も釣り場も空いているだろう。俺は雨の日の釣行は嫌いではない。四人を乗せた『わが青春のアルカディアⅣ』は進路を北に向け、数時間で釣り場に着いた。雨は上がり、曇りになっていた。釣り場に着くなり、俺は開口一番、西田に言った。
「だから、言ったろ!」
俺たち四人の目の前には寒々しい姿の冬の小川が静かに流れていた。
俺はこの段階で今日の貧果を予想したが、とりあえずみんなで竿を出すことにした。俺は流れの中を脈釣りで探ることにした。しかし、俺の予想に反し、後ろで釣っていたカッシーがすぐに
「釣れました。」
とニヤニヤしながら、俺の目の前に釣れたアカヒレタビラをぶらぶらさせてきた。さらに、しばらくすると、離れたところにいた局長も
「いるのはアカヒレタビラだけですね。」
と言いながら戻ってきた。そして、西田までが俺の目の前でアカヒレタビラ♂を目の前でぶっこ抜いた。俺はかなり焦りだしたが、しばらくすると、俺にもやっとアタリが出だした。こうなれば、こっちのものだ。俺にもアカヒレタビラを釣れ始めた。釣れるアカヒレタビラの婚姻色はまだ五分咲き程度だった。ここではまだ春本番にまでは至っていないようだった。
「おなか空きましたね。」
西田は燃費の悪い男なのだ。とりあえず、アカヒレも釣れたので、西田の言う通り、昼食を取ることにした。いつもならご当地ラーメンに行くところなのだが、この近辺では茹ですぎ手打ちピロピロの麺にチキンラーメンそっくりの味のスープという不思議なラーメン屋さんしかないので、コンビニで済ますことにした。
コンビニの後は違う釣場にいってみることにした。俺はすでに脈釣りは堪能したので、止水域でシモリ釣りをしてみることにした。ここではよく見ると、小さなアカヒレの幼魚がたくさん泳いでいた。アカヒレ幼稚園は人を疑わないよゐこの集まる幼稚園だった。仕掛けを振り込めば、すぐにアタリが出る。俺はこういう状態を長く楽しめるS的心はあまり持ち合わせていない。
「マタナゴだ!」
西田の声が聞こえた。俺が西田の声のする方へ振り返ったその時だ。ポチャンという水音が静寂の中に響いた。俺はいや~な予感がした。そして、やはり、その予感は的中した。俺のポケットにあったはずのスマホが清流の底に沈んでいる。俺は「西田のせいだ!」と頭に血が上りかけたが、0.5秒くらいで冷静で合理的ないつもの俺を取り戻した。そして、関釣具店で買った藻刈り鎌でスマホを川底から引き揚げた。俺はギャラクシーS5ACTIVEという防水仕様のスマホを使っている。サムスンの防水は堅牢だった。引き揚げられたスマホは無事にいつもの画面を映していた。
西田の声で気が付いた。そういえば、今日はまだマタナゴを釣っていない。俺はどちらかと言えば、今日はアカヒレをメインに考えていたので、マタナゴの釣場はまだ一か所も行っていなかった。そこで、アカヒレ釣りにはもう満足できたので、帰りがけの駄賃にマタナゴを釣ることにした。
しかし、これはマタナゴを舐めすぎた都合のいい計画だった。マタナゴ釣場には到着したが、日が西に傾いた途端、辺りは寒くなってきた。俺は急いで、流れの中に脈釣りの仕掛けを投入したが、アタリは全くなかった。しばらくすると、小川に濁りが入りだした。これは釣れるシチュエーションだと思ったのもつかの間、川はドロドロに濁り始めた。何事かと上流を見ると、局長がガサガサをしていた。(笑)
全体的に見れば、今日の釣りに満足は出来たので、この辺で上がることにした。しかし、今日はマタナゴを釣ったという点では西田が一番おいしい思いをした一日だった。俺は再び近いうちにマタナゴをメインに釣りに来ることをみんなに提案した。みんなも乗る気のようだった。俺はこの次来た時は西田の釣っているちょっと上流で局長と一緒にガサガサすることを密かに心の中で決めたのだった。
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